
主人公

藍沢 貴利也
アイザワ キリヤ
「くだらねえ噂話に興味はねえ。真実ってのは、テメェの目で確かめるモンだろうがよ」
本作の主人公、そのひとり。
弟・沙貴也の身に起きた事故をきっかけに、叡光学園に転入してきた青年。三年生。
剃刀のような鋭い眼光、不良じみた外見や言動で他者を遠ざけがちだが、面倒見が良く情に厚い兄貴肌。非常に身内想いな人物で認めた者は己が身を投げうってでも守ろうとする面もある。
特に沙貴也のことを心から案じており、彼を害する者には一切の容赦をしない。
転入当日に起きた事故をきっかけに、『日暮の墓守』に強い疑心を向けていくこととなる。
鋼鉄堂 征路
コウテツドウ セイジ
「謝罪も気を遣う必要もない。君自身が良いと信じる行動をとるのならば、我々教師は見守り、支えるだけだ」
本作の主人公、そのひとり。
私立叡光学園高等部に勤務する男性教諭。担当教科は現代文。二十七歳。
人情に厚く、卑劣を嫌う文武両道の寡黙な熱血漢。ストイックな性格と言葉数の少なさから、周囲に冷血漢と誤解されがち。 言葉こそ淡白だが、生徒を想う気持ちは非常に強い。
赴任から一年が経過した新年度、『日暮の墓守』の生活指導を一任されたことから彼らへの関わりはより深いものとなっていく。

『日暮の墓守』
―ヒグレノハカモリ―
私立叡光学園内で知らぬ者はいない、学園敷地内の丘の上に鎮座する旧校舎を溜まり場としている素行不良な六人の生徒たちの呼称。
彼らの入学以降、学園内で不審な事故の多発や不穏な噂が絶えず流れるようになり、実際、彼らに関わった生徒の行方不明者や自殺未遂者、事故や事件に巻き込まれる者などが後を絶たないため、いつし か『日暮の墓守』と呼ばれるようになったという。
鳳 ルイス
オオトリ ルイス
「殺して墓に埋めるんだ。この人も、次も、その次も。
僕らに……それ以外の道なんて、あるものか」
この物語の主要人物。『日暮の墓守』のひとり。
長身の、紳士然とした身なりの男子制服を着た女子生徒。二年生。十六歳。
舌鋒鋭く悪意や害意を向けてくる人物に対しては容赦のない言葉を浴びせることも多いが、その点を除けば模範的な優等生。
他の墓守たちのフォローに回るような言動が多く、楊や黒沼などの騒ぎを起こす者に対しては同じ墓守であろうと零下の視線や毒舌を向けることも。


鳶川 小夜
トビカワ サヨ
「人の命なんて軽い。それが解っているからこそ、テメェもこの墓を守っているんだろう?」
この物語の主要人物。「日暮の墓守」のひとり。
着崩した制服に気だるげな雰囲気を纏う女子生徒。二年生。十六歳。
粗野な口調に反して暴力を用いずに「友好的」かつ「平和的」に問題を解決する策士。要は情報通で人の弱みを掴むのが上手い。
つるんでいる墓守に対しても「友人ではない」と牽制し、隙あらば出し抜こうとするかのような言動を繰り返す。
本校舎や授業にはほとんど顔を出さず、出席日数もギリギリ。日中も旧校舎に入り浸っている姿が目撃されている。
久々津市内の児童養護施設に併設された教会に足繫く通っているのだが、信仰心は欠片も持ち合わせていない。
楊
ダグラス
龍一郎
ヨウ ダグラス リュウイチロウ
「応! おどれがそばにおるんなら百人力やで、密友!」
この物語の主要人物。『日暮の墓守』のひとり。
高校生らしからぬ超高身長の、恵まれた体躯を持つ男子生徒。二年生。十六歳。
筋骨隆々とした肉体とは裏腹に、飄々とした言動と関西地方のいくつかの方言が混じった口調から、軽薄な印象を他者に与える。実際、かなりの遊び人であり、隙あらば女子生徒に声をかけている姿が見受けられる。
墓守の中でも鳶川や鳳に言い寄るなどしているが二人には相手にされず、黒沼に対しては口説き文句のひとつも言わない。
特技は壁ドン。
運動神経は非常によく、他選手の動きを観察するだけでそれを超えるパフォーマンスをこなしてみせる、選手泣かせの超人。


黒沼 姫乃
クロヌマ ヒメノ
「お兄ちゃんとキリヤくん……どちらを選ぶかって? それはとても残酷な選択ね」
この物語の主要人物。『日暮の墓守』のひとり。
可憐な蝶や花を思わせる雰囲気の女子生徒。三年生。十七歳。
足音もなく他人に近づき、他者を惑わせるかのような言動が特徴的。学友のみならず教師、果てには墓守まで翻弄する。
墓守の中ではトラブルメーカー的立ち位置のようで、意味深な言葉で場や状況を引っかき回してはふっと姿を消してしまう。
彼女に言い寄った男性は必ず失踪する、という不穏な噂がつきまとっているものの、整った容貌や美しい所作など惹きつける魅力があり、特に男子生徒間で人気が高い。
此岸波 宣美
シガナミ ノリヨシ
「卿に送る言葉は──そう! 『ホレイショー、この天地のあいだには、人智の思いも及ばぬことが幾らもあるのだ』!」
この物語の主要人物。「日暮の墓守」のひとり。
大仰なまでに芝居がかった言動が特徴的な男子生徒。活力に溢れた、上品な装いの少年。三年生。
他人との会話では著名な作品の台詞や一文を抜粋する癖があり、勤勉な読書家。運動能力の高い文武両道。
幼年期から「天才子役」と称され活動していた「此岸波唯色(シガナミ ユイシキ)」本人。数々のドラマ番組やCMに出演してきた経歴を持つ。しかし現在は学業に集中するため役者としての活動を休止している。
此岸波本人は常々「他者を笑顔にしたい」と語っており、ゲリラ公演(歌唱)を精力的に行っている。実力には定評があるものの、他生徒からは厄介者扱いされている。


須王 司
スオウ ツカサ
「俺たちの周囲を探っておきながらその態度、か。嘘の吐き方……ひとつ、俺が教えてやっても構わないが?」
利発な雰囲気の、車椅子に座った生徒。三年生。十七歳。
幼少期から歩行障害を患い車椅子生活を余儀なくされているものの、非常に行動的で生徒会長の役職に代理で就いている人気者。
交友関係は広いが自分語りはしない性分で、良く言えば聞き上手。
去年の冬頃から不登校になった生徒会長の三条灘を精神的に追い詰めた、という噂が時おり囁かれている。
神之園 拝理
カミノソノ ハイリ
2019年8月31日に旧校舎屋上から飛び降りた生徒。
その他の生徒
真島 純(マシマ ジュン)
「くだらない噂に振り回されてる暇、私にはないのよ。お前は……そうでもないみたいね、羨ましいわ」
藍沢のクラスメイトで学級委員長を務める女子生徒。三年生。
気難しい性格ではあるものの、クラスをまとめ上げる力は確か。
藍沢が墓守に絡まれた途端に距離を置くようになる。
岬 統次郎(ミサキ トウジロウ)
「墓守どもには気をつけな。ただの学生だと甘く見てたら……アンタ、死ぬぜ」
久々津市内の公立高校に通う少年。三年生。
日暮ヶ丘学園の生徒ではないものの妙に学園の内情に詳しく、墓守たちに絡まれる藍沢にたびたび忠告をしてくる。
三条 灘(サンジョウ ハヤセ)
藍沢の転校当日、旧校舎の屋上から飛び降りた男子生徒。三年生。
須王とは生徒会役員として、お互いに信頼し合う関係だったようだが……。
その他の人物

ルーサー 神父
ルーサー シンプ
「私はいつも、みなさんの安寧を心から祈っておりますよ」
久々津市内にある児童養護施設「暁の里」に併設された教会にて神父を務める男性。叡光学園に雇われたスクールカウンセラーでもある。
常に柔和な笑みを浮かべている。眼鏡は伊達。
温和かつ聡明で達観した視点を持ち、施設内の子供たちのみならず、迷える者に助言をしている聖職者の鑑。